川口です。
まだまだ暑い日が続いています。前回まで胃瘻をテーマに取り上げました。今回からは私が実際に在宅診療で管理している胃瘻以外の栄養法を説明していきます。経鼻栄養という言葉を皆さん聞いた事はありますか?
Q 経鼻栄養って何?
消化管を利用して栄養を摂取する経腸栄養法の一つです。細いチューブを鼻の穴から挿入し胃まで到達させます。挿入したチューブから栄養剤や水分を投与する栄養法です。
豆知識
栄養法には経口栄養、経腸栄養、静脈栄養があります。腸が機能していれば経口栄養、経腸栄養を選択します。口から食べる事は可能だが摂取量が少ない方は口から飲む栄養剤を試します。
経腸栄養法は静脈栄養法と比較して腸粘膜の維持が可能です。絶食・静脈栄養時は腸管を使用しない為、腸粘膜が萎縮します。
腸管内には多数の菌が存在しており体内に侵入しないようにしているバリア機能が破綻してしまいます。
Bacterial translocation(バクテリアル トランスロケーション)と言います。
経腸栄養で腸を使用すると腸のバリア機能が維持できBacterial translocationを回避できると言われています。
Q 経鼻栄養はどんな時に行うの?
嚥下障害が原因で栄養が口からとれない時に選択されます。ただし6週間以上の長期にわたる場合は胃瘻、腸瘻を作成します。つまり短期間の栄養法と言われています。
ただし「胃瘻は何があっても作りたくない!胃に穴をあける事はしたくない!」と言う患者さんも実際にいらっしゃいます。
経鼻栄養のメリットとデメリットを説明し胃瘻をすすめます。それでも胃瘻を拒否するケースはあります。無理強いは出来ませんので承諾書を頂いて在宅でチューブを挿入し管理します。
Q 経鼻栄養のデメリットは?
チューブの自己抜去、胃の内容物が逆流しやすい、チューブの内径が細いと詰まる可能性がある、定期的にチューブを交換する必要がある、外見が気になる、チューブが鼻腔・咽頭内に留置されている事による違和感、チューブを気管内に誤挿入する危険性があるなどです。
Q 経鼻栄養のチューブはどれくらいの頻度で交換するの?
概ね2~4週間に1回の頻度で交換しています。
Q 鼻に管を入れっぱなしにして鼻の中に傷ができたりする?
チューブによる鼻腔内潰瘍が起きないようチューブの固定を工夫します。また交換の際は左右順番に行う事で皮膚トラブルなどが減るようにします。
実際に在宅で経鼻栄養で8年と長期にわたって管理できたケースもありました。御家族、訪問看護師さん、ヘルパーさんなどが日々しっかりとした管理を行ってくれた事で長期管理できたと思います。
実際に在宅で経鼻栄養で8年と長期にわたって管理できたケースもありました。御家族、訪問看護師さん、ヘルパーさんなどが日々しっかりとした管理を行ってくれた事で長期管理できたと思います。
さて次回は静脈栄養についてです。
9月も暑い日が続くでしょう。しっかり食べて夏バテしないように頑張りましょう!