第6回 ”熱中症”について

今後、暑くなるにつれて増えつつある熱中症について紹介したいと思います。

Q 熱中症とは?

熱中症とは、体内の水分や電解質のバランスが崩れたり、調節機能が破綻したりするなどして発症する障害の総称を指します。
熱中症は重症度により以下の3つに分類されます。

  1. Ⅰ度(軽症)
    熱失神、熱痙攣→高温下での多量発汗に伴う塩類喪失により痙攣をきたす。
  2. Ⅱ度(中等症)
    熱疲労→放熱のために皮膚循環が増し大量の発汗を生じ、二次的に他の体内血流分布が変わり、主要器官への循環減少が生じた病態.熱射病の前段階。
  3. Ⅲ度(重症)
    熱射病→高温多湿環境下で、体温調節機能が障害され、異常な体温上昇がみられる.
    熱中症と聞くと屋外で発症するというイメージが強いと思いますが、屋内での発症も十分あり得ます。高齢者の熱中症の症例のほとんどが屋内発症です。

Q 熱中症はなぜ起こるのでしょうか?

通常、ヒトは体温を恒常に保つために体温の調節機能がはたらきます。体温が上がると発汗し熱を放出し、体温が下がると血管が収縮し、皮膚表面の熱を低く保つことで体内の熱を外に逃がさないようにします。
高温・多湿・無風・輻射源の環境下では、体から外気への熱放散が減少し、熱中症が発生しやすくなります。
特に高齢者では、寒暖の感覚が鈍くなり、衣服の着脱や冷暖房の利用といった行動性の体温調節が遅れがちになります。また、高齢者は自律性の体温調節機能も鈍くなり、体に熱がこもりやすくなりがちです。体内の水分量も若年者と比較すると少ないため、脱水になりやすい傾向にあります。脱水が進行すると、発汗量や皮膚血流量も減少し、さらに深部体温の上昇が大きくなります。

Q 熱中症の症状は?

重症度により変わります。めまい・失神・筋肉の硬直・けいれん・大量の発汗・嘔気・頭痛・倦怠感・意識障害・高体温など、様々な症状が認められます。

Q 熱中症が疑わしい場合の対処法は?

こちらも、重症度により変わります。軽症であればまずは、涼しい環境へ移し、脱衣と冷却を行い、安静臥床させましょう。水分、塩分の補給も必要です。経口摂取が困難であれば、輸液を行います。
意識障害を伴ったり、中等症~重症の場合はすぐに救急要請を行いましょう。この場合もすぐに涼しい環境へ移し、脱衣と冷却を心がけます。病院では、全身の冷却、脱水や電解質バランスの補正などが直ちに開始されます。

Q 熱中症の予防は?

基本的なことですが、屋外ではなるべく暑い場所を避け、屋内では扇風機やエアコンを用いるなどして、涼しい生活環境を心がけましょう。
また、夏場は知らず知らずに発汗量も多くなりがちです。十分な水分と塩分の補給が大切です。
熱中症は致死的な救急疾患でもあります。適切な予防策を講ずることができれば回避することが可能です。これから暑くなる季節に備えて、予防を心がけることが非常に大切と思われます。

研修医 北島真理子