第31夜 骨転移の症例

川口です。

過ごしやすい季節ですね。
平成が終わり令和になりました。
大型連休を皆さまどのように過ごされましたか?

前回は骨転移について説明しました。今回は実際の症例です。

~症例~
35才 女性
乳癌、多発骨転移、多発肺転移
初診時の時点で骨転移による腰背部痛を認める
安静時疼痛NRS5
体動時の突出痛NRS8から9
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(使用薬剤)
フェントステープ4㎎ 1枚/日…オピオイド
デノタスチュアブル 1錠/日…ランマーク注射に伴うカルシウム低下の補正
マグミット330㎎ 2錠分2…下剤
オキノーム散5㎎ 疼痛時頓用…オピオイド
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上記内容で訪問診療を開始しました。
前回説明したランマーク注射を月に1回行っています。カルシウム低下の補正の為にデノタスチュアブルという薬を使用しています。

~デノタスチュアブル~
カルシウム、天然型ビタミンD、マグネシウムを含む錠剤です。
天然型ビタミンDは肝臓で代謝されたあと腎臓で活性型ビタミンDとなり小腸でのカルシウム吸収を促進します。

Q:安静時疼痛があるならオピオイドを増量しなくていいの?

その通りです。

ですがまず定期薬にロキソニン(NSAIDS)を組み込みました。ロキソニン60㎎3錠分3を開始しました。
過去の勉強部屋でもオピオイドとロキソニンやアセトアミノフェンの組み合わせについて説明しましたね。
ロキソニンを定期薬として開始したところ安静時疼痛はNRS2から3程度に軽減しました。
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フェントステープ4㎎
ロキソニン60㎎3錠分3
オキノーム散5㎎6P分3(食事30分前)
頓用使用のオキノーム散5㎎×2P
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次にご本人より頓用のオキノームを使用しても効果が無いと訴えがありました。
フェントステープ4㎎を使用しておりレスキューはオキノーム散5㎎です。
過去の勉強部屋で換算表を載せましたね、レスキュー量の目安に実は不足していました。
ちなみにフェントステープ4㎎はオキシコドン約80㎎に相当します。そのためレスキュー量は目安として15㎎になります。
また御本人は食事などで体を動かす時に疼痛が生じるという事でオキノーム散を食事30分前に定期投与として開始しました。オキノーム散は10㎎として使用するように変更しました。

上記内容に変更し疼痛はさらに軽減、食事も以前より摂取できるようになりました。
安静時の痛みは楽になった、でももう少し痛みを抑えたいと訴えがありました。
過去にオピオイド過量症状(傾眠、ふらつきなど)を起こした事もありオピオイドの増量に抵抗があるとのことです。
どうやら体動時の疼痛が増悪あり当時使用していたMSコンチンを自己判断で増量していた過去があるようです。
そこで上記処方に加えてセロクラール(イフェンプロジル)という鎮痛補助薬を追加しました。

“セロクラール20㎎6錠分3”
前回の勉強部屋でも鎮痛補助薬について少し説明しましたね。

~セロクラール(イフェンプロジル)~
脳循環・代謝改善薬です。脳梗塞後遺症、脳出血後遺症に伴うめまいの改善に対して使用する薬剤です。NMDA受容体拮抗薬の中に含まれています。NMDA受容体拮抗薬は痛みの伝達に関わっており、オピオイドの鎮痛耐性(初期に投与されていた薬物の量で得られていた鎮痛効果が減弱し同じ鎮痛効果を得る為により多くの量を必要とすること)に拮抗し鎮痛効果を強めます。
(臨床上の有用性は確立していません)

セロクラールを追加し体動時の疼痛は軽減しオキノーム散の使用量は増やすことなく落ち着きました。
肺転移による呼吸苦、咳が徐々に悪化してきました。
使用しているフェントステープとオキノーム散では症状軽減が困難な為、まずレスキュー製剤のオキノーム散をオプソ(モルヒネ)へ変更しました。
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フェントステープ4㎎
オプソ10㎎3P分3
ロキソニン60㎎3錠分3
セロクラール20㎎6錠分3
オプソ10㎎ 疼痛時・呼吸苦時頓用
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本来であればオキノーム散10㎎であれば換算表からはオプソ15㎎になります。ですが本症例は鎮痛補助薬とNSAIDSを併用かつレスキュー製剤の定期内服をすることで疼痛自体はかなり軽減していたのであえて少ない量で開始しました。
結果、疼痛と呼吸苦ともに軽減し外出もできるようになりました。

今回はここまでにしましょう。