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 「地域包括新時代」特集に藤元ドクター執筆の記事が掲載されています

「地域包括新時代」2018年12月号、
「大学病院が地域の医療機関と共催で認知症カフェを開催」

医療法人社団鳳優会 理事長
荏原ホームケアクリニック院長
藤元流八郎

鳳優会ドクターの記事が掲載されていますので、ご紹介させていただきます。

 年末年始休診のお知らせ

2018年12月29日(土)~2019年1月3日(木)まで休診とさせていただきます。
尚、緊急連絡は受付けております。
2019年1月4日(金)から通常診療いたします。
何卒ご了承のほどお願い申し上げます。

 第28夜 緩和医療について〜オピオイドについて④〜

川口です。
もう12月です。気温も下がり鍋料理が美味しい季節です。
今回はオピオイドを使用していても苦痛緩和困難だった症例を取り上げます。

~症例~
50歳 女性
同居しているのはご主人(日中は仕事で不在)
子宮頸部癌 腹膜播種 腸閉塞 多発リンパ節転移 多発肺転移 胸水 腹水 胃瘻(腸閉塞の減圧目的)
中心静脈ポートから高カロリー点滴を行っている。
口から氷程度の摂取なら腹痛は出現しない。
疼痛コントロールはプレぺノンを使用している。

プレぺノン:モルヒネの注射製剤です。シリンジポンプと呼ばれる機械(PCAポンプ)を使用して投与します。

プレぺノン100㎎シリンジ10ml 0.1ml/時で投与しています。
PCAポンプは前回説明しましたね。

上記のモルヒネ投与量で普段はNRS2~3でした。概ね疼痛はコントロール出来ていると思われました。ですがモルヒネの消費量が多い事に気づきました。

Q:何が起きているのでしょう?

癌性疼痛の悪化と思われましたが…


察時含め誰かが傍にいて話をしているとPCAボタンを押さないのですが一人になるとPCAボタンを多く押している事が発覚しました。
一人で過ごす恐怖、不安感が原因していました

リスペリドン液、ジブレキサザイディスなどの液体製剤、口腔内崩壊錠を試しましたが効果はありませんでした。その他の錠剤を試しましたが内服の際に腹部痛が出現し拒否するようになりました。

☆ここで大事なのは精神的な苦痛のコントロール☆
セニラン座薬(抗不安薬であるレキソタンの座薬)を処方しご主人が出発する前に使ってもらいました。
多少ウトウトするようになりましたが不安感が軽減しPCAボタンを押す事も無くなりました。

次に生じた問題は夜間帯に生じた不安感です。
ご主人が傍にいて落ち着かせようとしても効果なく不眠が続きました。
ご本人とご主人から何とか眠りたいと訴えがありました。
日中に使用していたセニラン座薬、ダイアップ座薬(セルシンという抗不安薬の座薬)などを使用しましたが効果は認められませんでした。

毎晩往診し点滴ルートの側管から夜間帯のみドルミカム(麻酔薬・鎮静薬)+生理食塩水の点滴で対応したところ6,7時間寝るようになりました。

~本症例のポイント~
・疼痛を強める原因として不安感、恐怖などがある。
・内服薬に拒否がある。
・患者さん、家族ともに強い薬を使ってもいい、意識が低下してもいいから
不安・不眠を取り除いて欲しいと訴えた。

今回使用したセニラン座薬、ダイアップ座薬、ドルミカムは鎮静薬に含まれます。

Q:鎮静薬とは?

中枢神経系に作用し興奮を鎮静する薬物を示します。オピオイドと抗精神病薬は含まれません。
~がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引きより~

~豆知識と補足~
治療抵抗性の苦痛に対して患者の意識を低下させる事を意図して鎮静薬を投与する事を「苦痛緩和のための鎮静」と呼んでいました。
2018年現在、各国で公開されているガイドラインにおける苦痛緩和のための鎮静の定義の中心をなす部分は「苦痛緩和のために患者の意識を意図的に低下させる事(意識を低下させる意図をもって鎮静薬を投与する事)」となります。

鎮静は鎮静薬の投与方法によって間欠的鎮静、持続的鎮静に分けられます。
持続的鎮静はさらに調節型鎮静と持続的深い鎮静に分けられます。

間欠的鎮静
鎮静薬によって一定期間意識の低下をもたらしたあとに鎮静薬を中止して、意識の低下しない時間を確保しようとする鎮静。
調節型鎮静
苦痛の強さに応じて苦痛が緩和されるように鎮静薬を少量から調節して投与する事。
持続的深い鎮静
中止する時期をあらかじめ定めずに、深い鎮静状態とするように鎮静薬を調整して投与する事。

~がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引きより~

今回の症例は使用している薬剤からも間欠的鎮静に含まれる要素があります。ですが、在宅医療では限られた薬剤の中で患者さんと主介護者が苦痛に感じていることに対応していく事が必要となります。その中で鎮静薬の中に含まれる薬剤を使用したので最後に鎮静について記載しました。
今回はここまでです。

次回はメサドンというオピオイドについて取り上げようと思います。

 第27夜 緩和医療について〜オピオイドについて③〜

川口です。
もうすぐハロウィンですね。
我が家では子供の仮装用の衣装を皆で作っています。
今回はオピオイド持続点滴を導入した別の症例を説明します。

~オピオイドローテーション、内服から持続点滴へ切り替え~

Q:オピオイドローテーションって何?

オピオイドの副作用により薬剤の効果を得るだけの量を投与できない時、薬剤の効果が不十分な時に、投与中のオピオイドを他のオピオイドに変更する事です。
~症例~
70歳 女性
大腸癌 多発肺転移 多発肝転移
経口摂取量は少なく中心静脈ポートから高カロリー点滴を行っている。
肝腫大による右季肋部痛、肺転移による咳嗽・呼吸苦を認める。
在宅酸素を使用している。
—————-
【内服】
ネキシウム20㎎ 1カプセル 就寝時…胃潰瘍予防の薬
デカドロン0.5㎎ 4錠 分2 朝、昼…ステロイド製剤
酸化マグネシウム250㎎ 6錠 分3 朝、昼、夕…下剤
ノバミン5㎎ 3錠 分3 朝、昼、夕…オピオイドによる吐き気予防
セレコックス100㎎ 2錠 分2 朝、夕…NSAIDS鎮痛剤
リン酸コデイン20㎎ 6錠 分3 朝、昼、夕…咳止めとして使用
オキシコドン5㎎ 2錠 分2 朝、夕…オピオイド
オキノーム散 2.5㎎ 疼痛時頓用…オピオイド 
—————-

【経過】
疼痛はオキシコドンでNRS1、レスキュー使用頻度もなく落ち着いていた。
呼吸苦・咳嗽が増悪傾向にありリン酸コデイン、オキシコドンでは緩和できていなかった。
定期薬のオキシコドンは継続、リン酸コデインを中止し頓用薬をオキノーム散からオプソ5㎎に変更

・モルヒネを使用する事で、息苦しいと感じる中枢の感受性低下、鎮咳作用、呼吸回数を少なくすることで酸素消費量の減少が期待できます。
・リン酸コデインは代謝過程で約10%がモルヒネになります。

患者さんは内服を整理、減らせるものは減らしてほしいという希望がありました。そこでリン酸コデインを増量するより中止しモルヒネに切り替えていく方針としました。

オプソを使用する事で呼吸苦・咳嗽が軽減、疼痛の悪化も認めなかった。
オプソの使用量をもとにMSコンチンを開始。オキシコドンは中止。
オプソ5㎎を平均して1日に6,7回使用していた。
MSコンチン10㎎ 4錠 分2 朝、夕
レスキューはオプソ5㎎

☆これでオキシコドンからモルヒネにローテーションされました。☆

その後、徐々に増量しMSコンチン60㎎、レスキューのオプソは10㎎に変更。
MSコンチン60㎎、レスキューの使用回数は4~6回。
その頃より徐々に経口内服が困難になった。

モルヒネ持続点滴に変更。(全身状態低下あり内服量の約1/3に)
CADDポンプを使用し塩酸モルヒネ10ml(100㎎)+生理食塩水90ml 計100ml 1.5ml/時で開始(36㎎/日)した。

Q:他にオピオイドローテーションをしないといけない時は?

使用しているオピオイドの副作用(せん妄、眠気、吐き気、嘔吐、便秘など)がひどい場合です。

例えばモルヒネやオキシコドンを使用していて便秘がひどく(各種内服しても改善しない場合)フェンタニル貼布薬へ変更する場合があります。
高度の腎不全がある場合、モルヒネの代謝産物であるM6G、M3Gの排泄が低下し蓄積する事で副作用が出現しやすい可能性が高くオキシコドンやフェンタニルへの変更が有効な時があります。

~実際のローテーション法~
換算表に従い現在のオピオイドと新しく使用したいオピオイドの換算量を計算します。現在使用しているオピオイドが比較的大量投与の場合は一度に変更せずに数回に分けて(数日)ローテーションしていきます。
☆計算上の換算量はあくまで目安です。患者さんの状態、年齢(高齢者の場合)で実際は微調整します。

~換算表(大体の目安です)~
コデイン200㎎/日=モルヒネ30㎎/日(内服)15㎎/日(注射)=オキシコドン20㎎/日(内服)、15㎎/日(注射)=フェントステープ1㎎/日、デュロテップMTパッチ2.1㎎/3日、フェンタニル0.3㎎/日(注射)=タペンタドール100㎎/日=トラマドール150㎎/日(内服)、150㎎/日(注射)
(座薬に関しては前回に換算を記載してあります)

今回説明した通り、症状により必用に応じて他のオピオイドへ変更する場合があります。オピオイドを使用していて困っている症状がある時は遠慮なく主治医に相談しましょう!
次回はオピオイドを使用していても苦痛緩和困難だった症例を取り上げます。

 搬送車・医師同乗サービス

搬送車・医師同乗サービスを開始しました。

最後の時を自宅で過ごしたい患者さんをサポートします。
現在病院に入院中。もう治療法がなく最後の時を待つばかり。治療がないなら家に帰りたいのだけれど、状態が悪く搬送車の中で急変する可能性がある。

そんな患者さんの退院をサポートします。当院医師が搬送車に同乗し、自宅まで見守ります。

 日本緩和医療学会認定研修施設となりました

荏原ホームケアクリニックあすかホームケアクリニックが日本緩和医療学会認定研修施設となりましたのでお知らせさせていただきます。

日本緩和医療学会に関してはこちら


緩和ケアセンターのご紹介

医療法人鳳優会グループでは、緩和医療学会認定医2名を筆頭に医科、歯科、看護、美容、のチームが連携し、在宅での苦痛緩和に、専門的に対処いたします。

当院でおこなえる検査・治療イメージ

緩和ケアセンタートップページ

 第26夜 緩和医療について〜オピオイドについて②〜

川口です。
9月になりました。すっかり秋めいてきました。
夜は少しずつ鈴虫の鳴き声が聞こえ始めましたね。
今回はオピオイドの内服が出来なくなったらについてです。
実際の症例をもとに説明していきます。

~症例~
60歳 男性
膵頭部癌 十二指腸浸潤 多発肝転移 肺結核
栄養はPICCカテーテルから高カロリー点滴管理。
閉塞性黄疸にPTBD(経皮経肝胆道ドレナージ)ドレーンチューブで対応。
—————-
【内服】
MSコンチン10㎎ 3錠 分3 朝、昼、夕・・・オピオイド(モルヒネ製剤)
オプソ5㎎ 疼痛時頓用・・・オピオイド(モルヒネ製剤)
イスコチン100㎎ 3錠 起床時
リファジン100㎎ 3カプセル 起床時
エタンブトール250㎎ 3錠 起床時
ピドキサール10㎎ 3錠 分3 朝、昼、夕
ネキシウム20㎎ 1カプセル 分1 朝
—————-
オピオイド以外に抗結核薬を使用しています。
【経過】
背部痛に対してMSコンチン、オプソの頓用内服で対応できていたが状態低下あり週末に内服困難になった。事前に内服困難時に備えてアンペック座薬10㎎(モルヒネ製剤)を処方しておいた。
週末、夜間帯で内服困難になり貼布薬や座薬を処方してもすぐに薬が手に入らない事が予測される。
アンペック座薬の使用は平均して1日4個だった。
レスキューを含めると1日に6回使用する事もあり座薬挿入に抵抗感も出ておりモルヒネ持続点滴に切り替えた。
~豆知識~
モルヒネ製剤には内服薬、座薬、注射薬があります。貼布薬はありません。

便秘はオピオイド使用中の患者さんに高頻度で生じます。
便秘対策…酸化マグネシウム、スインプロイクを使用しています。
酸化マグネシウムやラクツロースなどの便を柔らかくする浸透圧性下剤、ピコスルファートやセンノシドなどの腸蠕動を促進させる大腸刺激性下剤を使用します。

~豆知識~
オピオイドは脳のμ(ミュー)受容体を介して鎮痛作用を発揮しますが腸管に存在するμ受容体にも作用して腸の運動が抑えられ便秘になります。
スインプロイクは腸管のμ受容体へ作用する事をブロックします。オピオイドによる腸の運動抑制に拮抗し便通を解消させる薬剤です。

☆換算式☆
モルヒネ:内服60㎎/日=座薬40㎎/日=静注・皮下注30㎎/日

基本的には上記換算式で対応しますが全身状態が低下している場合、静注・皮下注は内服量の約1/3程度に変更する事があります。
本症例は全身状態低下しており
塩酸モルヒネ20ml(200㎎)+生理食塩水180ml 計200ml 1ml/時で開始した。(24㎎/日)

では次にどのような機械を使ってモルヒネ持続点滴を行うか説明します。
正確に時間単位で薬剤を注入する必要があり手動ではなくPCAポンプと呼ばれる機械を使用します。

~豆知識~
PCA:Patient Controlled Analgesia 自己調節鎮痛法を意味します。
PCAポンプを使用すると持続的に設定した速度で薬剤が投与されます。
痛みがひどい時はPCAボタンと呼ばれるボタンを押すとその都度設定された薬液量が投与されます。

Q:間違ってボタンを連続で押したら余分に薬液が投与されてしまうの?

過剰投与にならない為にロックアウト時間を設定していますので問題ありません。ボタンを押して一定時間が経過しないと何度ボタンを押しても薬液が投与されないようにしています。
~補足~
使用した機械はCADDポンプです。
塩酸モルヒネ20ml(200㎎)+生理食塩水180ml 計200ml 
1ml/時で持続投与
疼痛時PCAボタンを押して1ml/時を追加投与
ロックアウト時間は10分
上記で設定しました。
その後はPCAボタンの1日使用回数(追加投与量)を元に持続投与量を増量していきます。
病院では内服が困難になった際に速やかにオピオイド持続点滴が導入できますが在宅では週末や夜間帯ではすぐ導入できるわけではありません。
事前にいざという時用に内服以外のオピオイドを準備しておく事も重要です!

今回はここまでにしましょう。
次回は別の症例でまたオピオイドについて取り上げます。

 第24回 泌尿器領域の医療とケア研究会のご案内

泌尿器科センター長、あすかホームケアクリニック院長の青木医師が講演を行いますので、お知らせさせていただきます。

「第24回 泌尿器領域の医療とケア研究会」

日時:30年9月26日(水) 19:15〜21:00
場所:京王プラザホテル 44F「ハーモニー」
新宿区西新宿2-2-1 TEL:03-3344-0111