第7回 インフルエンザについて

今シーズンも、12月5日の週にインフルエンザ流行の目安としている定点あたりの報告数を超え、インフルエンザ流行シーズン入りました。
毎年日本では11月下旬~12月上旬に流行が始まり、1~3月にピークとなり、4~5月にかけて患者数は減っていきます。

高齢者やもともと基礎疾患(肺、心臓、腎臓の病気や糖尿病、免疫力の低下など)を持っている方で重症化し、入院・死亡するケースもあるため注意が必要です。

Q インフルエンザの予防法は?

  1. 予防接種
    最も効果の高い予防法です。
    インフルエンザワクチンは発症を抑え、かかった場合も重症化を予防する効果があります。健康な成人では70~90%の発症予防効果があると言われています。重症化のリスクが高い高齢者や基礎疾患のある方などで、もしかかっても比較的軽症ですむので有用です。
    流行の時期を考えると、12月中旬までには接種を済ませておきましょう。接種後2週間~5か月程度まで効果があります。
  2. マスク、手洗い、うがい
    インフルエンザは、罹患している人の咳、くしゃみ、つばなどの飛沫とともに放出されたウイルスを吸いこんで感染します。人ごみをさけること、外出時のマスクや帰宅時のうがい・手洗いは有効です。
  3. 加湿
    空気が乾燥するとインフルエンザにかかりやすくなるため、加湿器などで適切な湿度(50〜60%)を保つと良いです。

Q インフルエンザの症状は?

感染してから平均3日程度の潜伏期間の後に、発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身のだるさ、筋肉痛、関節痛などが突然現れます。咽頭痛、鼻汁、咳もみられます。
いわゆる風邪に比べて症状が強いのが特徴です。普通の風邪では咽頭痛や鼻汁や咳が中心ですが、全身の症状は見られないことが多いです。
大多数の人では何もしなくても1週間ほどで自然に治りますが、乳幼児や高齢者、基礎疾患がある方は注意が必要です。
高齢者やもともと基礎疾患がある方は、その疾患が悪化したり、肺炎を合併したりすることがあります。小児では中耳炎を合併したり、熱性けいれんや喘息がひきおこされたりすることもあります。

Q インフルエンザにかかったらどうする?

解熱剤を安易に使わず、病院にかかりましょう。
インフルエンザ罹患時、使えない解熱鎮痛剤があります。アスピリンなどのサリチル酸系解熱鎮痛薬やジクロフェナクナトリウムを含む解熱剤は15歳未満の患者に投与は禁忌です。インフルエンザにアスピリンを使用し、Reye症候群という危険な病態を引き起こす可能性もあります。
アセトアミノフェンの使用がより危険性が少なく適切で、非ステロイド系消炎剤の使用は慎重にすべきです。

Q インフルエンザにかかった家族の部屋や洋服の管理はどうしたらいい?

基本的にインフルエンザは飛沫感染であり、飛沫は1~2m以上は飛びません。患者がマスクをしていれば飛沫感染の発生は最小限に抑えられます。手指から接触感染する可能性もあるので、手洗いはしっかりしてください。狭い気密な部屋ではウイルスが浮遊していることもあるので、時々換気をすることと、湿度を適切に保つことが大切です。
インフルエンザ発症中に使用した衣類は、通常通りの洗濯をし、ひなたに干しておけば感染性は消失します。

Q 新型インフルエンザはどうなった?

2009年は、新型インフルエンザA/H1N1が大流行しました。人々が免疫を有していない新しいインフルエンザウイルスが出現し、通常の季節性インフルエンザとは流行の季節がずれ、感染の拡大も広く、より若年層で重症化しました。
大流行の後、多くの国のたくさんの人々が感染して、人々がある程度の免疫を持つようになり、2009年の新型インフルエンザは普通の季節性インフルエンザと同じような流行パターンをとるようになりました。2010年8月にはWHOは大流行が沈静化したことを表明しており、2011年4月には国立感染症研究所も新型インフルエンザを通常の季節性インフルエンザと同様に対策すると発表しています。
今シーズン(2011/2012)のインフルエンザの流行は北半球の国々ではA/H3N2型が多く、日本でも同様です。一部の国でB型や2009年に流行した新型インフルエンザが主流のところもあるという報告がある程度です。

Q インフルエンザの型とは?

インフルエンザウイルスはウイルス粒子内の核蛋白複合体の抗原性の違いから、A/B/Cの3型に分けられ、このうちA型とB型が流行します。
A型にはH1N1やH3N2などのタイプがあります。A型ウイルス粒子表面には赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という糖蛋白があり、HAには16の亜型が、NAには9の亜型が存在し、この組み合わせを表しています。
インフルエンザにかかると抗体ができて免疫力ができますが、同じ亜型であっても、毎年抗原性が変化する(マイナーモデルチェンジする)ため、毎年流行がおこってしまいます。これを連続抗原変異または小変異といい、マイナーモデルチェンジの変化が大きくなると、免疫がある人でも、また感染してしまいます。
さらにA型は数年から数十年単位で突然別の亜型にかわる(フルモデルチェンジする)ことがあります。これを不連続抗原変異もしくは大変異といい、人々が免疫を有していないため大流行となります。

インフルエンザにかからないように、また人にうつさないように気をつけて冬を過ごしましょう。

研修医 松本皆子

参考website:
WHOホームページ http://www.who.int/influenza/en/
国立感染症研究所ホームページ http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/