荏原ホームケアクリニックの川口です。
今回から連続でお届けするテーマは栄養について、です。
在宅で頑張っている患者さんとご家族にとって
一番興味があるテーマかと思いますので基本的な知識から
一歩進んだ内容、患者さんからよく聞かれる質問等など
盛り込んだ内容にしていきたいと思っています。
ではまずは基本的な知識の低栄養という問題を考えます。
栄養不足(低栄養)は、時として軽視されがちなこともありますが
実は様々な問題を引き起こすこともあるので注意が必要です。
Q低栄養になるとどうなってしまうの??
- 食事摂取量が低下すると、栄養不足、つまり低栄養になります。
これは当たり前ですよね。
すると体は、体の中に貯めこんでいる栄養素を利用し始める事で
足りない栄養分を補い、体力を維持しようとします。
まず糖質
次に脂肪
そして、たんぱく質
という順番で体力維持に利用されます。
すると体重は減少し、体力の免疫機能低下を招きます。
体力の低下は運動機能の低下に繋がるため
現在かかっている病気の悪化をも招きかねません。
さらに免疫機能の低下は、易感染状態にも繋がって行きます。
つまり、感染症にかかりやすい状態になってしまいます。
そうなると体力はさらに低下し、感染症が重症化して
生命をおびやかす危険性が・・という悪循環に陥ってしまうのです。
たんぱく質は筋肉や内臓、骨、皮膚などをつくり維持する上で
欠かせない栄養素です。
これが不足すると筋肉量の低下をまねき、運動能力が落ちます。
寝たきりになる危険性もありますし、
むくみや床ずれ(じょく創)を
生じる事もあります。
このように色々な問題を生じるので
主治医は患者さんに、食事は食べていますか?
どのくらい食べられていますか?
と、しつこくお伺いするのです。
そういった質問をしているとよく患者さんの家族から
「食事があまり食べられなくなりました。何が原因なのでしょうか?」
という質問が出ることがあります。
Q食事摂取量の低下の原因は何??
- これは本当に様々な原因があります。
大きく分けると加齢に伴う体の機能の低下によるものと
心理的・環境的なものの二つに分けられます。
前者は、歯の欠損や、噛む力の低下、嚥下力(飲みこむ力)の低下
唾液分泌の低下、消化液分泌の低下、消化器官の機能低下(胃腸の機能低下)、味覚の低下(感覚機能の低下)、食べようという意欲の低下、
嗜好の変化などがあげられます。
後者は、一人暮らしになり食事を用意するのが面倒
一人で食べてもおいしくないから食べたくない
買い物に行くのが面倒
高齢の夫婦で気付かないうちに食べる量が減っていくなど
各生活パターンによって、さまざまな原因があげられます。
また、飲んでいる薬の副作用による食欲の低下
経済的な要因もあるかもしれません。
このように理由は様々な事が考えられますが、心理的、環境的な要因は
一緒に住んでいる御家族、介護者の方がいち早く気付くこともありますので
注意深く観察する事が必要になってきます。
毎日見ている患者さんの表情がいつもより少し浮かない顔している時
声をかけて話しを聞いてあげる
そんな些細なことから始めてみるのもいいかもしれません。
そうは言っても
食事量が低下するとやはり心配になるのは当然のことですね。
Q食事摂取量が低下してきたらどのように対処したらいいですか?
- バランスのいい食事内容、3回の食事にこだわらず、
食事の回数を増やして対応してみましょう。
嚥下力が問題の場合は、それに合わせた食事形態の変更
消化管に問題がある場合には、胃腸への負担が少ない
消化に良い食べ物への変更など。
もちろん患者さんが嫌がるのに食事を与えようとすると
食事を摂取する事に対しストレスを感じ、さらに摂取量が低下する
という悪循環に陥ることもあります。
嫌がる時は無理に与えず、間食を利用して、栄養価の高い物を
与えるのもよいかと思います。
周りが必死に様々な料理を並べて
「食べて!食べて!」と言っても食べたくない時だってありますよね。
慌てずに患者さんの一日の生活サイクルや性格などを考えて
時々メニューを見直してみては如何でしょうか。
今回は栄養についての第1段として
基本的な内容をお話ししてみましたがお役に立てたでしょうか?
次回は第5夜は“一日の必要カロリー”についてなど
一歩進んだ内容にしようと思っています。
是非、楽しみにしていて下さいね。