第5夜 高齢者の栄養 ➁  ~必要カロリー量とは?~

荏原ホームケアクリニック 川口です。今回は高齢者の栄養についての第2段です。

”高齢者”と言っても置かれている状態は人それぞれ。

歩行可能な方もいれば、そうでない方もいるように、食欲旺盛な方や、食が細い方等々・・。
ご本人様にとっても、介護者にとっても、また医療関係者のみなさんにとって

目の前にいる患者さんのカロリー量が気になる時があるのではないかと思います。

今回は一日に必要なカロリー量、そして代表的な病気によってどのくらいのカロリー量が必要なのかについて説明して行きたいと思います。

Q 1日に必要なカロリーはどのくらいですか?

こういった質問を実際に多く受けますが、カロリー量は病気によって異なって来るので
まず第一に病気のことは考えずにお答えするようにしています。

  • 非常に簡易的な計算式があります。
    適性カロリー:25~30kcal×理想体重(IBW)
    IBW:ideal body weight(理想体重)=身長(m)×身長(m)×22kg

上記の計算式があてはまるのは、あくまで健康高齢者です。
現在かかっている病気や、身体の状態、活動性を全て考慮すると数値は若干異なって来ます。
その点については次の項目で説明しますが

IBWを利用して栄養障害がどの程度あるのかというガイドラインがあります。

%IBW=実測体重/IBW×100
%IBW:80~90%=軽度栄養障害
70~79%=中等度栄養障害
69%以下=高度栄養障害

普段当たり前のように取っている我々の食事が
自分にとってどれほどの栄養状態を与えるのか。
食事を普通に食べられる人であればあまり考えないことでも

高齢者にとっては深刻な問題に発展することもあるものです。

では次に病気、身体の状態、活動性などを利用した詳しいエネルギー算出法を説明します。

必要エネルギー量(kcal)=基礎エネルギー消費量×活動係数×ストレス係数
これはHarris-Benedict(ハリス・ベネディクト)と呼ばれ
実際に必要とされるエネルギー量は個々の置かれたストレス係数や

活動係数の値を乗じて算出する必要性があると考えられ作られた計算式です。

【基礎エネルギー消費量の算出法】
※男性、女性によって算出方法が多少異なるので注意。
男性:66.5+13.75×体重(kg)+5.0×身長(cm)-6.76×年齢(歳)
女性:655.1+9.56×体重(kg)+1.85×身長(cm)-4.68×年齢(歳)

【活動係数】
寝たきり(意識低下状態):1.0
寝たきり(覚醒状態):1.1
ベッド上安静:1.2
ベッド外活動あり:1.3~1.4
一般職業従事者:1.5~1.7

【ストレス係数】
慢性低栄養状態:0.6~1.0
手術前、退院直前:1.0
手術:1.1~1.8(手術の度合によります)
外傷:1.2~1.6(傷の度合によります)
感染症:1.2~1.5(軽症、重症で異なります)
熱傷:1.0~2.0
また体温が37℃を1℃超えるごとに0.1を加えます。

複雑な計算式になっているので実際には簡易計算式の方が多く用いられていますが
まずは患者さんの基礎数値を知って栄養をコントロールして行くことも大事ですね。
なかなか食欲がわかない方や、一回に食べる量が少ない高齢の方であれば間食(10時、15時)で補うことも重要ですよ。

次回は栄養不良によって起きた皮膚トラブルについてお話ししてみようと思います。

実際に治療して傷がよくなっていく過程の写真も載せて説明しようと思っているので

是非、楽しみにしていて下さいね!

是非、楽しみにしていて下さいね。