第8夜 高齢者の足のむくみ

荏原ホームケアクリニック 川口です。

常勤医の川口です。
もうすっかり暖かい季節になってきました。
さて今回のテーマは足のむくみについてです。原因となる病態、病気は多種に渡りますのでなるべく簡略にかつ簡単に読みやすいように説明していきます。

Q むくみって何?

  • むくみ(浮腫)は体の水分が異常に増えてしまった状態です。

    血管の外に、余分な水分(血しょう成分)が溜まった状態のことを言います。
    この「血しょう成分」とは、血液の液体部分のことで、血液が運んできた栄養分や酸素を、腎臓や肺などの組織に運んでいるのですが、この本来の役割を果たした血しょう成分は、通常は血液に戻ります。
    では何故、余計な水分が溜まるのでしょうか。
    簡単にメカニズムを説明します。

    人間の身体には、全身を巡るように動脈、静脈の二つの血管とリンパ管が張り巡らされています。
    そして、心臓がポンプとなって送り出された血液は、動脈を通り身体の隅々まで行き渡り、血液の血しょう成分が、細胞間の細胞間液になって細胞に酸素や栄養を届けます。
    酸素や栄養を届けた細胞間液は、次に細胞で使われた後の二酸化炭素や老廃物を回収し、再び血液の血しょう成分となり、静脈やリンパ管を通って心臓に戻ります。
    このとき静脈の働きが悪いと、リンパに送られる細胞間液(血しょう成分)の量が増えてしまいます。
    むくみの仕組みは、静脈の流れが悪かったり、リンパ液がスムーズに流れないことで、細胞間液が血管に戻らず、細胞と細胞の間に細胞間液、いわゆる余分な水分(血しょう成分)が溜まってしまうことにより、むくみが出現します。

Q 肥満とどうやって見分けるのでしょうか?

  • 太っている=肥満ですね

    人の体はさまざまな物質でできています。おおまかには水分と、筋肉に多く含まれている糖質とたんぱく質、骨に多く含まれているミネラル、脂肪です。肥満というのは、このなかの脂肪の割合が増えている事を言います。
    自分でむくんでいると思うところを指で押してみましょう。

    むくみの場合、指で押した跡ができます。肥満ではおきませんよね?肥満の方の体を強く押したら凹んだなんて聞いたことがないでしょう。
    むくみがひどいと体重が10㎏~20㎏近く増える人もいます。

人間の体は約60%が水分です。ただし年齢によってパーセンテージは異なります。過去の勉強部屋で説明した通り高齢者はさらに少ないのです。
この水分のうち2/3は細胞内液といって細胞内にあります。残りの1/3は細胞の外にあります。細胞外液と言います。
この細胞外液のうち1/4は血漿水といって血管の中に存在します。残りの3/4は細胞と細胞の間に存在する組織間液と呼ばれます。

Q 高齢者(主な病気が無い人)の足がむくみやすいのは何故?

  • 上で述べたように様々な病気が原因として考えられるのですが、簡単に説明します。

    まず高齢になると運動不足になります。すると何が起きるでしょうか?
    筋肉量が減り、筋力が低下し新陳代謝が低下します。足の筋肉というのは実は血液を循環させるポンプの役割を持っています。つまりポンプがうまく機能しない訳ですから老廃物やリンパ液、血液が溜まってしまうのです。

次に心臓が悪い人はなぜむくむのでしょうか。

Q 心臓の悪い人はむくむの?

  • 最初に心臓とはどのような働きをするかを説明しましょう。
    心臓は簡単に説明するとポンプと思ってください。ポンプの機能が悪くなると全身に十分な血液を送り込めなくなります。すると血液の流れが滞ってしまい全身にむくみが生じるのです。心臓の機能が悪くなる=心不全といいます。

    心不全は色々な心臓病や心臓以外の病気が原因で起こります。血液の流れが滞ってむくみが生じることから「うっ血性心不全」とも呼びます。
    以前は、心臓から腎臓へ血液を運ぶポンプの機能が低下してしまう事を改善する為に、利尿剤(尿を出しやすくする薬)、強心薬(ポンプ機能を強くする薬)、血管拡張薬(血管を広げて血液の流れを良くする薬)を使う事が治療の中心でした。

    現在は心不全の原因として、上記に述べたポンプ機能の低下以外に、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系というホルモン系(専門的になるので名称だけにしておきます。)が着目され、治療の中心となっています。

Q 心不全でむくんでいる方の食生活で気をつける点としては?

  • やはり塩分でしょうね。でもあまりに塩分制限をしてしまうと逆に食欲低下をきたしてしまいます。1日あたり塩分を6gくらいに抑えてくださいと言われている方は多いのではないでしょうか。

    6gは大体ですが小さじ1と1/5杯分くらいです。パンや麺類などの加工品にも実は塩分は含まれているので注意してください。

    私の好きなうどん100gに約130mg(メーカーにより異なります)、ロールパン100gには約500mgのナトリウムが含まれています。
    このように加工品に調味料を使ってしまうと簡単に塩分摂取量が増えてしまうのです。
    我々の一般的な食生活で塩分を6gに制限するという事はなかなか難しいのが現状です。厳しい塩分制限で食欲が落ちてしまい体重が減ってしまったり、精神的ストレスが強くなる場合もあります。
    そのような場合は医師と相談してみてください。

☆味見もしないで習慣的に醤油、ソース、塩をかけて常に味を濃くして食べている方は多くいるでしょう。
病気になる前に塩分の少ない食生活を心がけましょう。

次回は、これからの時期、おいしく食べられるサクランボが、健康面でどのような効果があるのかを説明したいと思います。